2013年秋  南ア 北岳

一昨年の正月以来仕事をしていてもその他のことをしていても、あの北岳の白い巨大な壁がしばし白昼夢のように頭の中に現れ、なぜあの時もう一押し出来なかったかという不甲斐なさを払拭出来ずにいた。「なぜ山に登るか」 とは昔からよく言われてきたことだが、今までそういうことはあまり考えたことはなかった。そんなことはどうでもよかった。しかし夏山シーズンが終わるころ生まれて初めてその問いに向き合うことになる。やはり北岳に登りたい。それも冬に、誰の助けも借りずに登りたい。しかしそれには危険がともなう。時間と金を浪費することになる。そこまでして登る価値あるのか、と自問自答を繰り返す。北岳に対する強い憧れがある。二度トライして登頂果たせなかったその壁を乗り越えたいという気持ちもある。そうすれば今より強い人間になれそうな気がする。夏山の指定地などでは必ず経歴話で盛り上がるが、「俺は冬の北岳に登った」 そういった功名心も無いと言ったらウソになる。北アのトレーニングのとき編笠山の帰りにI氏と口論になった。どうしても折立から黒部源流を縦走したいという。僕はその計画にそこまでこだわる価値あるのか理解困難だったがそれは彼の夢であり、ロマンなんだという。夢を追い、実現させることで人は充実した気持ちになり、日常にもいい影響を与えるから意義は大きいと言う。それならそれに見合った準備をしろよ、人任せにすんなよと僕は苛立つのだが、しかし人はお互い影響し合って生きているもので、やはりこの北岳に登りたいという気持ちを無理に押さえつけるのは間違っているのではないかと思ったりもする。8月、I氏の希望通り北アのど真ん中を駆け抜け少し自信を取り戻すことが出来た。秋になって次の正月は行くか、否かと迷っていたがウジウジ考えていても進展はないので、10月の3連休、とにかく偵察に行こうと出かけることにした。

12日朝、広河原アルペンプラザで準備をするがどうにも体がカッタルくて出発出来ない。9:30頃ようやく外に出ると見慣れたはずの景色に思わず感激し半分寝ていた全身の細胞に電流が流れるような感じがした。やはり北岳は素晴らしい。こう言っては申し訳ないが黒部源流とは格が違う。「あそこに登りたい!」 と素直に強く思った。この気持ちになれただけでも来た甲斐あった。2ヶ月ぶりの山だったのですっかり体力は落ちていて、北アに向けて鍛えていたころの精悍さは過去のものになっていた。喘ぎながら八本歯のコルまで上がり問題の稜線を見たとき 「やれる!」 と思った。というかインスピレーションのようなものが走った。そしてグヮーッとテンション上がってきた。このファイト、日ごとに膨れ上がっていき昨年も一昨年もこれが得られなくて登頂する勇気が湧かなかったのだ。

翌13日、ボーコン沢ノ頭で1人で幕営している女性に会った。正月以外でも北岳に登り冬の剱等にも登っている大変な実力者だがずいぶん腰の低い人で、目からウロコが出てきそうな情報を丁寧に教えてくれた。「小屋からピストンだと帰りはヘッドランプ点けて歩くことになります。森林限界直下に風の当たらない良いテント場があります。稜線に張るならこの二重山稜のところ。ただ風は強いですが・・ 八本歯の通過は自信なければロープを使うこと。下のハシゴはいつも出ているから大丈夫です」 僕は丁重にお礼をし、「そろそろ行かないと暗くなってしまうので・・」 と言って白根御池まで下りテントを張った。


11/9

冬の北岳は登れても登れなくても今回で一応区切りをつけたいと思う。高尾山でトレーニング開始。稲荷山コースから登頂。


11/16

稲荷山コース〜高尾山〜影信山まで足を延ばす。


11/30、12/1

あの女性のアドバイスで方針が決まった。トレーニングを兼ねて池山御池小屋まで食糧、燃料、ロープを荷上げしておくことに決めた。水が得られないと思ったので4ℓ持ってきたから申し分ないトレーニングになったが、すでに結構な積雪だったのは想定外だった。気休めに持ってきた4本爪アイゼンとストックで登ったが難儀し、最後に道を見失い、夜9時まで歩いたあげく小屋を見つけられずツェルトでビバークするハメになった。翌朝明るくなってから気を取り直し地図とコンパスたよりに小屋を探し、なんとかたどり着き胸をなで下ろす。無事だったことと、荷上げ出来なかったら北岳は諦めかと思ったのでとにかく良かった。


12/9

再び高尾山へ。6号路〜頂上〜影信山〜小下沢〜北高尾山稜〜八王子城跡〜高尾駅を歩く。荷上げの効果で影信山までノンストップで2時間で行くことが出来た。小下沢の分岐からは結構な悪路で高尾山だと甘くみてるとえらい目にあう。八王子城跡で日が暮れたがここは幽霊スポットで、お化けと一緒にビバークは怖いからヘッドランプ点けてガンバッて下山。

 

 

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